在宅勤務で長時間労働が増加した?~残業時間を減らす方法~
働き方改革推進や新型コロナウイルス感染拡大防止対策として、在宅勤務を導入する企業が増えています。在宅勤務は、コスト削減や人材確保、通勤時間の削減、家事・育児との両立など、企業にも社員にも様々なメリットがあることから、今後ますます普及していくとみられています。
一方で様々な問題も浮き彫りになっており、その一つが「長時間労働」です。在宅勤務時の残業管理は、「原則残業禁止」「みなし残業制度」「事前申告制度」など、企業によって対応が分かれています。しかし、残業時間が通常のオフィス勤務より増えたという調査結果も発表されており、早急な対策が必要とされています。
そこで今回は、在宅勤務における長時間労働の実態を踏まえた上で、「在宅勤務での残業時間を減らす方法」をご紹介します。在宅勤務のより効果的な方法や、今後の在宅勤務導入に向けてお悩みのご担当者様は、ぜひ参考にしてください。
在宅勤務における長時間労働の実態
まず初めに、在宅勤務の普及による長時間労働の実態をみていきましょう。 日本労働組合総連合会が、在宅勤務を行った全国の18歳~65歳の労働者1,000名を対象とした「テレワークに関する調査2020」によると、 下記の結果が出ています。
通常の勤務よりも長時間労働になることがあった | 51.5% |
1日の労働時間が8時間を超えていた | 37.9% |
時間外・休日労働をしたにも関わらず申告していない | 65.1% |
時間外・休日労働をしたにも関わらず勤務先に認められなかった | 56.4% |
「時間外・休日労働をしたにも関わらず申告していない」理由として、「申告しづらい雰囲気だから」「時間管理がされていないから」などが挙げられています。
「在宅勤務期間の残業代は支払わない」としている企業も多いようですが、本来は在宅勤務であっても、時間外労働・休日労働・深夜労働が認められる場合には、通常のオフィス勤務と同様に割増賃金(残業代)が発生するため、企業側は支払わなければなりません。また、在宅勤務では、仕事とプライベートの区別が難しいことや、オフィス勤務時と比較してサービス残業に気づきにくいことが想定されますが、企業は社員を守る義務があるため、長時間労働を引き起こさないよう努める必要があります。
なぜ在宅勤務では残業時間が増えるのか
仕事の効率化や、生産性向上が期待される在宅勤務ですが、なぜ残業時間が増えるのでしょうか。ここでは、残業時間が増える要因となっている、在宅勤務の問題点をご紹介します。
・仕事とプライベートの区別が曖昧になる
自宅で働くことになるため、仕事中にテレビやスマートフォンに目を向けてしまうなど、別のことに意識が向き、集中できずにダラダラと働いてしまうことがあります。集中できていないと業務時間内に仕事が終わらなくなり、残業時間の増加に繋がります。また、家に子供や他の家族がいることで集中する環境を作れないケースや、ネットワークや机など、自宅に十分な仕事環境がないケースもあります。
一方で、周囲に人がいない環境のため、かえって仕事に集中できることや、常に仕事用のPCが手元にあることから、休日や昼夜問わず仕事をしてしまい長時間労働になるなど、仕事とプライベートの境界が曖昧になりがちです。
・コミュニケーションに時間が掛かる
在宅勤務では、これまで短時間で済んでいた社員同士のやり取りに時間が掛かるようになる傾向があります。対面でのやり取りが無くなり、コミュニケーションの中心はメールか電話です。しかしメールは、作成や相手からの返答を待つ時間など、直接のやり取りでは発生しない時間が生じます。文字でのやり取りは、細かいことが伝わりきらず、やり取りの回数が増えて手間取ることもあります。
また電話は、受信者の時間を奪うだけではなく、相手の状況や都合を配慮して掛ける必要があるため、伝えたいタイミングでリアルタイムに話ができない場合があります。このように、情報共有や、報告、相談に時間が掛かることが、残業時間の増加に繋がっています。
在宅勤務での残業時間を減らす方法
在宅勤務での残業時間を減らすためには、オフィス勤務時とは異なる仕組みやルールが必要です。厚生労働省の「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」によると、在宅勤務における長時間労働を防ぐ方法として、下記の4つが挙げられています。
・メール送付の抑制
在宅勤務における長時間労働が生じる要因として、勤務時間外や休日に業務に係る指示や報告が送られることが挙げられます。そのため、上司や会社から業務時間外のメールや電話でのやり取りを自粛させることが有効です。
・システムへのアクセス制限
在宅勤務で業務を行う際、自宅にあるパソコンから社内システムにアクセスする形態をとる企業が多いでしょう。しかし、業務時間外にもアクセスできるようになっていると、サービス残業に繋がりかねません。深夜・休日はアクセスできないように設定をすることで、長時間労働を防ぐことが可能になります。
・テレワークを行う際の時間外・休日・深夜労働の原則禁止
業務の効率化やワークライフバランスの実現の観点から在宅勤務を導入する場合、その趣旨を踏まえ、時間外・休日・深夜労働を原則禁止とすることが有効です。この場合、在宅勤務を行う社員に、在宅勤務の趣旨を十分理解させるとともに、時間外・休日・深夜労働の原則禁止や上司等による許可制とすることなどを、就業規則に明記することや、時間外・休日労働に関する三六協定の締結の仕方を工夫することが有効です
・長時間労働等を行う労働者への注意喚起
在宅勤務により長時間労働が生じるおそれのある社員や、休日・深夜労働が生じた社員に対して、注意喚起を行うことが有効です。具体的には、上司がタイムカードなどの労働時間の記録を踏まえて行う方法や、労務管理システムを活用して対象者に自動で警告を表示する方法が挙げられます。
これら4つの他にも、在宅勤務中に利用が増える傾向にあるメールや電話がコミュニケーションを停滞させる要因となるため、コミュニケーションツールを見直し、簡単にやり取りができるビジネスチャットを導入することで残業時間削減に繋がります。
また、業務の内容・進捗状況や結果を可視化し、共有する仕組みを構築することも有効です。これにより在宅勤務中の業務を見える化できるため、労働時間が把握できることに加え、人事評価の際に、成果だけなく業務のプロセスも評価できるようになります。
まとめ
在宅勤務では、社員の様子を見ることができない分、残業時間の実態把握や問題意識が希薄になりがちです。しかし、残業時間を適切に管理することの重要性は、在宅勤務であっても変わらず、オフィス勤務の際と同様の労働時間管理が求められます。会社や上司が主体となって残業時間削減に向けた取り組みを行うことで、今よりも更に効率的な在宅勤務の実現を目指してみてはいかがでしょうか。
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