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長時間労働の是正を成功させるための取り組み~働き方改革の実現に向けて~

2021.02.04 コラム

2020年の4月から中小企業にも本格施行された働き方改革の中でも、長時間労働の是正が大きな課題になっています。「働き方改革関連法案」の制定など、国を挙げて長時間労働の是正を進めていますが、依然として対応が遅れている企業が多く存在するのが現状です。長時間労働を続けた社員や職場が受けるリスクは、最悪の場合には過労死や経営危機など非常に大きいため、企業全体の意識改革が求められています。

そこで今回は、「長時間労働の是正を成功させるための取り組み」をご紹介いたします。

長時間労働の原因

なぜ、多くの企業から残業や休日勤務が減らないのでしょうか。長時間労働に陥る原因を3つご紹介します。

人手不足による業務負担の増加

長時間労働の理由として、最も多く挙げられるのが人手不足です。労働人口の減少や賃金の上昇で多くの人を雇えないといった事情から、人手が足りず、業務量や業務内容に対して必要な人員を雇用できない企業も少なくありません。業務過多の状態が長期化すると、心身の疲弊はもちろん、休職や離職に繋がるリスクがあります。

長時間労働を暗黙する企業風土

残業が当たり前という企業風土があると、長時間労働に繋がるケースが多くなります。「他の人が残業しているので帰りにくい」「業績が悪いので残業するべき」といった職場の雰囲気により、定時になっても退社しにくく、仕方なく残業している社員も多いようです。また、「残業をしている=頑張っている」という認識が根付いている職場もあり、帰れるのに帰らないという社員もいるようです。

リーダーや管理職のマネジメント不足

リーダー管理職は、部下の業務進捗や業績管理だけではなく、社員の勤怠や仕事量の管理を行う必要があります。しかしながら、労働時間が長い社員ほど高く評価する、社員間の業務の平準化を図っていない、仕事の指示に計画性が無いなど、マネジメント不足が原因で長時間労働が引き起こされるケースも少なくありません。また、残業を前提とした仕事の指示や、終業時刻直前に指示をするなど、リーダーや管理職の長時間労働に対する意識の低さも長時間労働の原因となります。

長時間労働のリスク

長時間労働には、社員本人だけでなく、企業にも大きなデメリットをもたらします。具体的にどのような影響とリスクがあるのでしょうか。

<社員のリスク>

心身の不調

長時間労働が続くと心身の負荷が大きくなり、睡眠や休養に充てられる時間が不足するため、ストレスが溜まり疲労を回復することができません。疲れが溜まりやすい状態が長期間に及ぶと、業績に影響するだけでなく、うつ病や過労死などの深刻な事態を引き起こすリスクが高まります。また、疲れが抜けないことで正常な判断力を失い、自殺を図ってしまうケースもあります。

・業務効率の低下

長時間労働が続き疲労が溜まると、集中力や作業能力が低下してミスが増え、作業の効率が悪くなります。また長時間労働に伴う集中力の低下は、業務中のケガなどの事故発生の増加にも繋がります。

<企業のリスク>

・残業代などコストの増加

社員が長時間労働を行うと、企業側はその分の超過勤務手当(残業代)を支給しなければなりません。労働基準法で定められた法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える法定外残業の場合は、25%以上の割増賃金を支払う必要があります。この他にも、オフィスを長時間稼働させることで光熱費などの増加も想定されます。

・離職者の増加

労働者はより良い労働環境を求めるため、長時間労働が習慣化されている企業では離職率が高まると考えられます。実際に新入社員の離職理由にも「労働時間に対する不満」が挙げられています。離職者が増えると、残った社員への負担が増加し、さらなる離職者や長時間労働を招く悪循環も懸念されます。

・企業イメージの低下

長時間労働は企業の社会的イメージを低下させます。求職者に対して、長時間労働が多いというイメージを与えると、採用市場において不利な状況に陥るリスクがあり、さらなる人手不足を招く恐れがあります。また長時間労働により、過労死や、過労を苦にして自殺する社員がいた場合には、企業の対外的な信頼が大きく揺らぎ、既存顧客からの取引中止や株価の下落など、経営危機を引き起こすケースも想定されます。

長時間労働の解消に向けた取り組み

法整備が進み、長時間労働の是正に取り組む企業が増えたことで、長時間労働を行っている企業の割合は、減少傾向にあるものの、諸外国に比べると日本の労働環境はまだまだ改善が必要です。そこで、長時間労働の解消に向けた取り組みを5つご紹介します。

社内の意識改革

長時間労働を是正するためには、社員全員の意識を改め、長時間労働の削減に取り組む必要があります。特に残業が当たり前の企業風土が根付いている企業では、経営層管理者層が率先して長時間労働に対する意識改革を行う必要があります。そのため、社員教育を行うことが効果的です。リーダーや管理職に対しては、長時間労働のリスクや管理方法を教育するマネジメント研修など、具体的な行動のあり方を教育する必要があります。また、一般社員に向けては生産性向上の研修など、業務効率に対する取り組みを行い、社員の意識を高めていくことが有効です。

勤怠管理の徹底

勤怠管理の徹底を行うためには、「労働時間の見える化」を行う必要があります。社員の自己申告に頼るのではなく、サービス残業や早朝出勤など見えない労働時間を可視化して、労働時間を適正に把握することが必要です。勤怠管理は適正な賃金の支払いに繋がるだけではなく、長時間労働の早期発見や防止効果も期待でき、社員の健康維持やモチベーションの向上にも繋がります。

「ノー残業デー」の促進

「ノー残業デー」とは、社員に残業をさせず定時退社を推奨する取り組みのことです。各企業が「残業0」を目指す中で、長く続いた慣習を180度変えることは、企業にも社員にも労力がかかるのが実情です。そこで実施されているのが「ノー残業デー」の導入です。まずは、社員に定時で帰る習慣をつけさせることで、業務効率の向上を図り、徐々に「残業0」を目指していくのです。オンとオフのメリハリをつけ、仕事を効率的に終わらせることで、個々のプライベートの充実に繋げることが期待されています。

年次有給休暇の取得促進

有給休暇の取得を促進することで、総労働時間の削減に繋がります。2019年4月より、一定の要件を満たす労働者に、年5日以上の有給休暇を取得させることが義務化されたものの、社内に有給休暇が取得しにくい風土がある場合や、業務に支障が出る恐れがあるという理由で取得が促進されていないケースがあります。有給休暇を取得しやすい職場作りに取り組むことで、業務の効率や生産性が高まり長時間労働の抑制に繋がることが期待できます。

外部委託への切替え

長時間労働の原因の一つとして先述の通り、人手不足が挙げられます。業務の洗い出しを行い、マニュアル化できる比較的単調な業務を外部委託することで、大幅な労働時間の削減に繋がります。社員を採用するよりもコストを抑えられることに加え、単調作業を切り離し、よりコアな業務に集中できることから、社員自身のキャリアアップやモチベーションアップの副次的効果も期待できます。

まとめ

長時間労働は生産性や業績を悪化させる原因になるだけでなく、企業に様々なリスクをもたらすため、優先すべき経営課題と言えます。長時間労働の削減を実現するためには、職場環境や働き方そのものを見直す必要があり、経営層や管理層による強い意欲と取り組みが必要不可欠となります。まずは現状を正しく把握し、原因に適した対策を、自社の事業や特徴に合わせて取り入れていくことが重要です。

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