オンボーディングとは?新入社員の即戦力化と離職防止の鍵
「せっかく時間やお金を掛けて採用をしても、戦力になる前に離職してしまう」
「即戦力として入社した中途社員が組織に馴染めず、能力を発揮できないまま離職してしまう」など、
新入社員の早期離職や人材の定着にお悩みの人事ご担当者の方も多いのではないでしょうか。そんな中、若手社員の即戦力化や人材の定着に有効な「オンボーディング」が注目を集めています。
そこで今回は、「オンボーディングのメリットや実施方法」をご紹介いたします。
オンボーディングとは
オンボーディング(on-boarding)とは、企業が新しく採用した社員を対象に、仕事をする上で必要な知識やスキル、企業の理念やルールなどを早期に身に付けさせ、即戦力化し、組織の一員として定着させることを目的とした教育プログラムのことです。
もともとは、『機内』や『乗船』という意味を持つ「on-board」から作られた造語で、飛行機や船に新しく乗り込んできた乗員や乗客に対して、新しい環境に慣れてもらうために必要なサポートを行うという意味から派生して、5年ほど前から人事用語としても使用されるようになりました。主に新入社員や若手社員を対象として行う、メンター制度やOJT制度とは異なり、オンボーディングでは中途社員も含めた新規採用者全員が対象となります。
オンボーディングを行う3つのメリット
オンボーディングを実施することで、3つのメリットが得られます。
①新入社員の即戦力化
一般的に新入社員が戦力となり、成果を上げるまでには、半年から1年ほど掛かると言われています。業務内容やスキルを一から身に付ける必要があるため、新入社員教育に時間が掛かるのは仕方のないことですが、企業としては1日も早く仕事を覚えて欲しいというのが本音でしょう。また、即戦力を期待した中途採用者についても、企業独自のルールや方法に慣れるまでに時間が掛かり、すぐに本来の能力を発揮できないケースもあります。
しかし、オンボーディングを実施することで、自身の能力を最大限に引き出しながら、仕事を素早く覚え、スキルとして活かすまでのプロセスを明確にし、従来の社員教育よりも短期間で即戦力化できるため、即戦力化を目指す企業にとって、とても効果的です。また新入社員にとっても、自分自身が会社に貢献していると実感でき、達成感が得られるため、離職防止に繋がることが期待できます。
②社員の離職防止
今や、新卒で入社後3年以内の離職率は約3割が当たり前になっており、多くの人が離職の理由として「人間関係(先輩・上司)に対する不満」を挙げています。
新入社員が仕事を円滑に進めるためには、業務内容を覚えるだけではなく、上司や先輩・同僚とのコミュニケーションも欠かせません。しかし、入社直後に人間関係の構築につまずいてしまうと、自分がやりたくて選んだ仕事であってもやりがいを感じられず、最終的に退職になりかねません。そのため、新入社員が入社してすぐに会社に馴染めるようにサポートするためのオンボーディングが、離職防止に効果的です。
③エンゲージメントを高める
エンゲージメントとは、社員の組織に対する自発的な貢献意欲(愛着・思い入れ)のことで、「社員のエンゲージメントが高い=会社への愛着度が高い」ことを示します。組織の一員として受け入れられ、認められることにより、自分の働き方や組織に対する貢献の仕方が見え、「働きがい」が感じられるようになります。オンボーディングによりエンゲージメントが向上することで、社員が自発的に業務に取り組んだり、社員同士が互いに助け合う関係性が構築されるなど、企業と社員の間により一体感が生まれ、エンゲージメントがより高められていきます。
オンボーディングの実施方法
では、実際にオンボーディングを取り入れるためには、どのような流れで実施するのが良いのでしょうか。5つのプロセスに分けてご紹介します。
①オンボーディングの目標設定
新入社員に対して、いつまでにどのようなスキル身に付けて欲しいか、またどのように活躍して欲しいかなど、最終的なゴールを設定することで、より確実に理想的な人材に育成できるため、まずは目標設定を行いましょう。具体的には、新入社員に自社に慣れてもらうための「コミュニケーション」と、仕事をする上で必要な知識やスキルを身に付けさせるための「業務」の2点から目標設定することが大切です。既に自社の新入社員の離職率が高い場合には、その退職理由を解決するための目標を設定することが効果的です。
②オンボーディングプランの作成
どのような取り組みをしたら、求めている能力やスキルを身に付けてもらえるかを考え、プランの詳細を作成します。入社当日、1週間後、1カ月後、3カ月後、半年後…と長期的なスパンで作成し、入社後1年程度を目安にスケジュールを組み、実施する内容と達成すべき目標を明確に定めましょう。また、基礎部分は共通項目として活用できますが、新入社員一人一人の性格やスキル・配属先などを踏まえて、個別に作成することで、より効果的になります。
③すり合わせ
実際に業務を行っている現場社員と人事担当者では、課題として感じていることにズレが生じている可能性もあるため、プランを作成したら、配属部署など関係各所との共有を行い、改善項目の洗い出しを行いましょう。その都度、企業の課題も変化するため、一度プランを作ったら終わりではなく、新入社員の入社のタイミングで定期的に見直しを行うことが大切です。
④実行とフォロー
オンボーディングプランが完成したら、作成したプランに沿って実施しましょう。新入社員が段階ごとに成功体験を得ることで、確実に実力が付き、企業の一員であると自覚できることで、更なる生産性の向上や組織の一体化に繋がります。配属部署や人事担当者だけでなく、社内全体でフォローを行うことも、オンボーディング成功のためのポイントです。
⑤振り返りと再実行
オンボーディングが終了したら、必ずプランの振り返りを行いましょう。人事担当者だけでなく、新入社員や配属先の上司から意見を聞き取ることが大切です。当事者の話を聞くことで、効果的な施策や今後の改善点が明確になります。これを基にPDCAサイクルを回し、より良いオンボーディングにしていきましょう。また、実際に離職率の低下やエンゲージメントの向上に影響しているか、効果の測定も行いましょう。
オンボーディングプランの例
ここまで、オンボーディングのメリットや実施方法をご紹介しましたが、具体的には何をすれば良いのでしょうか。オンボーディングのプラン例をご紹介します。
即戦力化のためのオンボーディングプラン
新入社員を即戦力にするためには、できるだけ早く業務に必要な知識や能力を身に付けさせることが必要です。そのためには、新入社員が学習しやすい環境を整える他、各種マニュアルを制作することで、分からないときにすぐ見返すことができるようにしておくなど、十分な準備と効率良く学ぶことのできる環境を提供しましょう。
新入社員が即戦力になるための具体的なプランは、次の通りです。
各種マニュアルの作成、配布 |
OJT制度 |
業務日報の提出 |
必要なスキルを身に付けるための課題図書の設定 |
外部研修の受講(入社前~入社後) |
人間関係構築のためのオンボーディングプラン
新入社員のように、後からチームや組織に加わる人にとって、人間関係は大きな不安要素になります。入社後、組織に馴染めずに離職してしまう社員が多い場合には、上司や先輩など既存の社員が積極的なフォローを行うことで、不安を和らげる必要があります。
人間関係構築のための具体的なプランは、次の通りです。
メンター制度 |
同期会など横の繋がりを増やす |
同じ部署や他部署とのランチ会 |
定期的な1on1ミーティング |
日々のコミュニケーションの活性化 |
エンゲージメント向上のためのオンボーディングプラン
新入社員に自社のルールや理念を身に付けさせ、いち早く社風に馴染んでもらうことで、早期離職の防止に繋がります。
エンゲージメント向上のための具体的なプランは、次の通りです。
経営理念や企業案内の作成、配布 |
社長や経営層による会社の歴史や経営理念の講義 |
経営理念や組織・各部署が目指す目標の講義 |
まとめ
オンボーディングとは、新規採用者の即戦力化と人材定着を目的とした教育プログラムのことで、新入社員が能力を発揮し、安心して業務に取り組める職場環境にするためにも、オンボーディングの活用は重要です。オンボーディングプランに正解はありませんので、新入社員や現場社員の声を参考にしながら、内容を改善していくことで、より自社に最適な方法を導き出すことができます。活用のためには、人事ご担当者だけでなく全社員の協力が必要になるため、すぐに全てを実践することは難しいかもしれませんが、できることから取り組んでみてはいかがでしょうか。
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