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永久に尽きないコンプライアンス研修のネタの探し方-実践的社員研修のCAM

2021.12.10 コラム

社員の不適切行為や企業の不祥事の増加に伴い、益々注目が高まるコンプライアンスですが、皆様の会社では教育をされていますでしょうか。必要性が分かっていても、教育できていない企業様も多いようです。コンプライアンス研修の実施には準備が必要です。そこで今回は「永久に尽きないコンプライアンス研修のネタの探し方」を解説します。

 

コンプライアンス研修のネタ探しの前にやるべきこと

コンプライアンス研修を実施するためには、研修内容を構築するためのネタを探す必要があります。しかし、階層や部署など求められる役割によって、必要な知識や身につけさせたいスキルが異なるため、研修内容を決める前に対象者を明確にする必要があります。また、研修を形骸化させないためには、実施前に目的を明確にしなければなりません。そこで、ネタ探しの前にやるべきことを2つご紹介します。

研修を受けさせる対象者を明確にする

コンプライアンス研修では、階層によって求められる知識やスキルが異なるため、対象者ごとに研修内容を変える必要があります。そのため、まずは研修の対象者を明確にしましょう。

例えば、新入社員にはコンプライアンスの基礎知識を習得させる必要がありますが、管理職の場合は、社内でコンプライアンス違反が起きた場合の対処法や、部下への指導法を含め、新入社員より難易度の高い知識を習得させる必要があります。また、会社によりコンプライアンス体制が異なるため、中途社員に対しても、理解を深める研修の実施がおすすめです。また近年では、外国人を雇用する企業が急増していますが、生まれや文化・習慣が異なる外国人労働者には、一般的に日本の生活・働き方・法令など、働く上で最低限必要な情報を理解させる必要があります。

さらには、部署によっても求められる知識が異なるため、研修内容が変わります。例えば、取引先と直接接する機会が多い営業部の場合、契約ルールを遵守すると共に、接待や内部情報の取り扱いに注意が必要です。一方で経理部では、経費の不正処理のリスクがあるため、取引に関わる書類管理が求められます。

研修を実施する目的を明確にする

研修を形骸化させないためには、実施前に目的を明確にする必要があります。目的が明確でないと、受講者の実情と異なる内容になり、学びが少なく意味のない研修になる恐れがあります。コンプライアンス研修の主な目的を3つご紹介します。

社会人として最低限のルール習得

コンプライアンスの知識は、社員一人ひとりが習得する必要があるため、新入社員に対しても頻繫に実施される研修の一つです。知識や経験が浅い新入社員が、社会人として相応しい振る舞いができるようにすることが目的です。また、法令だけでなく、SNSの取り扱いや、機密情報の取り扱い方法の指導も行います。

②不祥事による会社の社会的信用低下防止

コンプライアンス違反が発生すると、企業は社会的責任を負い、信用の失墜や売上減少だけでなく、倒産に追い込まれるケースも少なくありません。そのため、社員一人ひとりにコンプライアンスの知識を習得させ、リスクマネジメントをする必要があります。研修を通じて、どのような行動がコンプライアンス違反にあたるか理解し、違反が発生した場合の影響を認識させます。

③社員の仕事への意識向上

コンプライアンス研修により社員が組織の一員としての自覚を持ち、法令遵守をすることで、社会に安心を与え、信頼される企業になります。社会的責任を果たしているという認識を社員が持てると、自分の仕事に誇りを持つことができ、仕事への意識向上に繋がります。

コンプライアンス研修のネタの探し方

コンプライアンス研修は、ネタの精度により、受講者の学習意欲に大きな影響を及ぼします。そのため、研修で取り上げるネタは、同業種の他社や著名企業の事例、省庁や関連団体のHP、書籍など、様々なソースから見つけることが大切です。

また、作成したコンプライアンス研修の内容は、自社の法務部やコンプライアンス委員会など、関連部署に監修してもらうことにより、情報の整合性を確認した上で、自社により適した内容にすることができるため、研修の質の向上に繋がります。

コンプライアンス研修のネタ探しにおすすめの方法を6つご紹介します。

同業種の他社事例から探す

自社と異なる業務のやり方をしていても、同じようなリスクを抱えていることがあるため、同業種の他社事例から探すことは有効です。同業種の実際に起きた違反事例や対策を取り入れることで、イメージがつきやすく、社内での対策にも落とし込みやすいため、社員がより積極的に学ぶ姿勢が見られます。

コンプライアンス違反があってニュースになった著名企業の事例を活用する

著名企業のコンプライアンス違反はメディアで取り上げられることが多く、多くの社員が目にすることでしょう。そのため、話題になった違反事例は社員の関心が高く、学習意欲や危機管理の向上が期待できます。また著名企業であっても、一度コンプライアンス違反が発生すると処罰され、マスコミに取り上げられることでイメージダウンに繋がる恐れがあります。話題になった事例と同様の違反が起こると、世間は過敏に反応するため、事実関係や原因・背景を分析し、より一層の注意が求められます。

省庁や関係団体の情報から探す

省庁や関係団体から情報が公開されているため、HPを確認することが有効です。違反事例が掲載されているため、自社で起こり得る内容を取り入れることができます。各省庁・関係団体が、どのような内容を取り扱っているかご紹介します。

・厚生労働省

各種ハラスメントや、労働基準法・労働安全衛生法などの労務関連

・経済産業省

外国為替や輸出入などの対外取引の管理を行う外国為替及び外国貿易法や、不正競争を防止する不正競争防止法に基づく違反

・消費者庁

景品表示法に基づく不当表示や、消費者が商品を購入、あるいは営業を受けた際にトラブルになった事例

・文化庁

文芸・美術などの著作物を保護するための著作権の他、ネット上に違法にアップロードされた著作物

・公正取引委員会

公正かつ自由な競争を目的とした独占禁止法に基づき、商品価格の設定・入札談合などの反競争的行為

・一般社団法人安全保障貿易情報センター(CISTEC)

国際社会の安全維持を目的として、武器や技術がテロリストに渡らないよう輸出規制を行う、安全保障貿易管理

・日本音楽著作権協会(JASRAC)

著作権の中でも、音楽著作物に対する違反(CDなどの音源の録音・配信)

・著作権情報センター(CRIC)

文芸・美術などの著作物を無断で使用する著作権違反

書籍から探す

コンプライアンスの専門書や事例集は様々な種類があるため、ネタ探しに有効です。業界ごとの事例集もあるため、自社に合った内容を見つけることができます。また、危機管理アドバイザーや弁護士などの専門家が書いた本は、プロの視点からの見解や情報を得ることができます。

専門家からアドバイスを得る

危機管理アドバイザーや弁護士などの専門家に、実際に相談することも有効です。社内や業界でよく見られる事情を相談することで、より実用的な内容を取り入れることができます。専門知識を持った専門家からアドバイスを受けることで、研修の精度が上がります。

また、研修会社に委託することもおすすめです。プロの講師に依頼することで、専門的な視点から、自社の課題に応じた研修内容を構築してもらうことができます。また、経験豊富なプロの講師が登壇することで、場の雰囲気を盛り上げ、受講者を惹きつけることができます。

SNSから探す

社員が会社への不満をSNSに書き込んだり、社内の機密情報を写真に撮って載せたり、内部告発をするケースも少なくありません。このような、社員の書き込みによる炎上事例を取り入れることで、社員に注意喚起を促すことができます。

 

新入社員向けのコンプライアンス研修におすすめのネタ

つい先日まで学生だった新入社員には、コンプライアンス研修を通じて、基礎知識を習得させ、社会人としての意識付けをする必要があります。そのため、違反しやすい法律を学ぶことはもちろんですが、社内の人間関係に影響するハラスメントや、不正を見つけた時の対処法も理解させましょう。さらに、新入社員に対して最も重要な要素は「SNSの使用方法」です。SNSが特に身近な存在である新入社員には、不用意な投稿が大きなトラブルに繋がるリスクを自覚させる必要があります。

新入社員向けのコンプライアンス研修におすすめのネタを6つご紹介します。

景品表示法

景品表示法とは、商品の広告や景品を規制する法律で、機能・サービス・金額のような、消費者が商品を選ぶ際に必要な情報に対して、広告表示や過大な景品提供を規制する法律です。そのため、消費者を誤認させるような不当表示をすると、景品表示法違反に当たります。

例えば、『ウイルス・菌を99.9%除去』と包装に表示しているにもかかわらず、裏付けとなる合理的な根拠がないケースや、原産国を偽り外国産の商品を国産と表示したケースなどが挙げられ、違反を起こすと懲役または罰金、あるいはその両方が科されます。このような違反を起こさないためにも、研修を通じて適切な広告表示や法制度を理解すると共に、違反を起こした際の影響を理解させることが必要です。

著作権・意匠権・商標権

著作権とは、文芸・美術などの著作物を保護する権利で、他人の著作物を無断でコピペや使用する行為は著作権法違反になります。

意匠権とは、商品のデザインに対して独占権を認める制度です。意匠登録されたデザインと同じ、あるいは類似の商品を無断で販売する行為は、意匠権侵害にあたり意匠法で禁止されています。

商標権とは、商標(商品・サービス名やロゴマーク)を独占できる権利のことで特許庁に届出を出すことで登録されます。商標権者以外が登録された商品・サービスを販売することは商標法違反にあたります。

不正競争防止法とは、企業に正当な営業を遵守させることで、適正な競争を確保するための法律で、公正な競争を阻害する行為を禁止することで、公正な市場を確保する法律です。

これらの権利は、それぞれ法律で定められており、違反すると損害賠償が請求される他、懲役または罰金、あるいはその両方が科されます。このような違反を起こさないために、研修を通じて各法律について知る必要があります。

ハラスメント

「ハラスメント」は、近年のコンプライアンス研修において欠かすことのできない要素です。従来のパワハラ・セクハラ・モラハラに加え、マタハラ・パタハラ・リモハラなど、様々なハラスメントが、多くの企業で起こり得ることから、コンプライアンス研修のネタとして改めて注目されています。

20206月に施行された(中小企業は20224月~)「改正労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)」では、各企業に対してパワハラを防止するための措置が義務付けられ、これに関連してセクハラやマタハラを防止する関連法も施行されています。

パワハラ防止法自体に罰則の定義はありませんが、厚生労働大臣が必要と認めた場合には、事業主に対して助言・指導・勧告ができます。また、勧告に従わない企業が公表される場合もあるため、ハラスメントを起こさないための取り組みが必要です。したがって、どのような行為がどのハラスメントにあたるのか、また自分自身が被害者にも加害者にもなり得ることを理解させる必要があります。

同僚や上司の不正を発見した際の対処法

新入社員にとって最も難しい対応は、不正会計や不正受給のような、社員の不正やコンプライアンス違反を発見した際の対処法です。研修を通じて知識を習得し、その行為が不正だと分かっていても、上司・先輩に対して指摘することが難しいと感じることがほとんどでしょう。不正を発見しても見て見ぬふりをしていると、より大きな事態になり、様々な法律違反や、顧客や取引先の信用低下に繋がるため、社内にコンプライアンス委員会のような専門の相談部署を設けることも有効です。

SNSでの書き込みのマナー

SNSの書き込みマナーが守られてないと、情報漏洩や不適切行為を引き起こし、企業イメージの毀損に繋がる恐れがあります。例えば、バイトテロのように常識に著しく反する投稿や、特定の人種・性別を差別する発言は世間の反感を買い、炎上する危険性もあります。社員個人のSNSへの投稿であっても、会社の愚痴や社外秘の情報を書き込むなど、情報の中に企業が特定できる内容があると、職場が特定され、自社の名誉毀損にも繋がりなりかねません。また、事実無根の情報を書き込み、その内容が他人の信用を貶めた場合は「信用毀損罪」、他人の業務を妨害した場合は「偽計業務妨害罪」で罰せられる恐れがあります。

情報セキュリティ

社会のIT化が進むにつれて、インターネットや情報に関する被害が深刻化しています。その中で、情報の機密性・完全性・可用性を確保する情報セキュリティの重要性が高まっており、知識の習得が求められています。情報セキュリティの知識が不足した状態で業務を行うと、ウイルスの感染、顧客の機密情報や個人情報の漏洩、システム障害など、様々なトラブルが発生する恐れがあります。特に、個人情報の漏洩により大きなダメージを受けた企業は多くあります。その原因が社員の不正やミスであることも少なくないため、事例を用いて損失を理解させた上で、危機感を持たせることが大切です。

中堅社員向けのコンプライアンス研修におすすめのネタ

中堅社員は、部下を育て、チームをまとめる立場であるため、新入社員のように単に基礎知識を学ぶだけでなく、コンプライアンス違反を起こさない・起こさせない職場づくりを意識した研修を実施する必要があります。そこで、中堅社員向けのコンプライアンス研修におすすめのネタを2つご紹介します。

最新のコンプライアンス事情

長年同じ業務に携わっていると、これまでの知識や法令で物事を進めてしまう傾向があるため、研修を通じて最新のコンプライアンス事情を学ぶことが大切です。業務に最新の情報を取り入れられていないと、法律が改正されていた場合、知らず知らずのうちにコンプライアンス違反を犯す恐れがあります。そのため、法律が改正されている場合には、変更点やポイントを取り上げる必要がありますし、法律が変わっていなくても、時代の流れとともに見方や運用方法が変わることもあるため、注意が必要です。

部下との関わり方

中堅社員の役割として、コンプライアンス違反を起こさない・起こさせない職場づくりがあります。そのためには、部下の見本になるように自分自身が違反を起こさないことはもちろんのこと、部下に違反を起こさせないための知識や、万が一部下が違反を起こしてしまった場合の、不正行為への指導法・部下への聞き取りの仕方も習得する必要があります。

また、部下に対する感謝の気持ちを持ち、相談しやすい関係性をつくることで、トラブルが発生した場合に報告してもらいやすくなるため、日頃のコミュニケーションの取り方も習得することがおすすめです。また、パワハラによる労働災害やメンタルヘルス障害の発生など、ハラスメントを原因としたコンプライアンス違反にも注意が必要です。

コンプライアンス研修資料の用意の仕方

受講者の学習意欲や実際の理解度は、講師の話し方だけでなく、研修資料の作り方も大きく影響するため、資料の中身も非常に重要なポイントです。法令や事例ごとにまとめた資料を作成することで、わかりやすく復習がしやすくなります。

また、資料に画像や動画教材を活用し、研修内でクイズを行うことで、受講者を惹きつけることができます。そこで、資料を作成する上でのポイントを3つご紹介します。

法令や事例ごとにまとめる

研修資料の構成は、下記のように、最初に事例を紹介し、その根拠として法令を解説すると効果的です。

  1. コンプライアンス違反の事例紹介
  2. 関連する法令の解説
  3. 事例から学ぶポイント

ただ、事例や様々な法令の情報があると、受講者は難しく感じ、混同してしまう恐れがあります。そこで、それぞれの法令や事例ごとに情報をまとめると、わかりやすく整理された資料になります。資料がわかりやすいと、研修が終わった後も社員が復習しやすくなります。研修から時間が経つと忘れてしまうこともあるため、後から見てわかりやすい資料の作成は重要なポイントです。

画像や動画教材を活用する

画像や動画教材を活用することで、研修の内容がイメージしやすいため理解度が高まり、受講者の興味をより惹きつけやすくなります。また、研修中の集中力を維持することもできます。具体的には、事例や法令の紹介をイラスト付きの関係図を作成する他、社内での想定事例を、実際の職場を使って動画にすると、よりイメージがしやすくなります。

受講者へのクイズを用意する

研修を一方的な講義にしないためにも、クイズを取り入れて参加型の形式にすることで、研修に対して積極性・参加意識が増すため、眠くなりにくくなります。クイズの内容は、「事例が違反に当たるかの○×クイズ」や「違反が発生した場合の取るべき行動」を問う問題が挙げられます。具体的な内容を用いることで、実際の現場がイメージしやすいため、自分自身の状況に当てはめて考えることができます。

まとめ

今回は、コンプライアンス研修を成功させるために、「コンプライアンス研修のネタの探し方」を解説しました。対象者や目的を明確にした上で、自社に合った研修のネタを探してみてください。自社で研修を実施するのは難しそうと感じた方は、是非弊社にご相談ください!貴社の課題やご要望に沿った研修をご提案いたします。

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